ふるさと味めぐり

素材編2
小さな粒にしっかりと栄養を蓄えた
山葡萄

数多くの品種があるぶどうですが、その多くはヨーロッパやアメリカがルーツになります。その中でも山葡萄は日本生まれの希少なぶどうで、東北や北海道、高地など寒い地域で育ちます。一般的なぶどうに比べて粒も小さく、収穫できるくらい実がなるまでに5年程かかると言われており、希少性も高いそうです。薬の代わりに使用されていた歴史もあるそうですが、酸味と渋みが強く、生食には向いていないため、ジュースやジャム、ソース、ワインなどに使用されています。

Point
ポイント

優れた栄養成分を誇る
山葡萄
ぶどうには抗酸化作用が強いといわれるポリフェノールが多く含まれていますが、山葡萄にはぶどうの約8倍のポリフェノールが含まれています。他にも、全身に酸素を運ぶ役割を持つ鉄分や、眼精疲労に効果があるといわれるアントシアニンもぶどうの3倍以上含まれており、小さな実にたくさんの栄養が詰まっています。
山葡萄の木の皮を剥いで作られた籠バックは大変価値が高く、使えば使うほどツヤが増し、壊れても修理ができるため、三世代先まで使えるほど長持ちすると言われています。籠バッグは、道の駅や体験工房、宿泊施設などの複合施設「おおのキャンパス」にて販売されています。
山葡萄は1日の寒暖差があると糖度が上がりやすく、糖度を測りながら収穫をしています。下重農園さんでは平均糖度が20度くらいになってから収穫を開始しており、ワインやジュースに加工する際に美味しく仕上がります。
全国50%の山葡萄を収穫する
岩手県洋野町を訪れる
岩手県は山葡萄の生産量が多く、全国1位の収穫量を誇ります。岩手県洋野町には山葡萄を栽培している農家は4軒あり、その中の1軒である下重農園さんでは昭和60年頃から山葡萄の生産を始めました。最初は種をまいて栽培を始めましたが1本も実がならず、山から枝をとってきて「さし木」をして育て、徐々に面積を増やしました。安定して収穫できるようになるまで20年程かかったそうです。一般的なぶどうは1本でも実がなりますが、山葡萄にはオスとメスの木があるため近くにないと育ちません。そのため、開花期の天候によって収穫量が大きく異なり、実の量に応じて1本ずつ肥料の量も変えて育てています。
山葡萄には日照時間の長さで熟すものと寒さで熟すものの2種類があり、現在では年間約7トン~15トン収穫しています。植え替えの時期により生産量は異なるそうですが、今年は10トンほどの収穫量を見込んでいます。収穫は、最盛期を迎える10月半ばには10人ほどで行い、1日の収穫量は1人あたりおよそ50kg。熟していない緑色の実などを手作業で分けながら収穫するため時間がかかるそうです。下重農園さんではほとんどの作業を手作業で行い、1本1本の木と向き合いながら、愛情の詰まった山葡萄を出荷しています。